「辞めてもらう」前に会社がすべきこと

解雇はリスクが高い。では辞めてもらうにはどうすればいいのか?とお感じの経営者の方が多いと思います。

退職の種類、のところでご紹介したとおり、解雇以外の退職には「辞職」「合意退職」などがあるのでした。

従業員にとって、会社に残るよりも退職した方が得策だ、と考えるような状況にならない限り、辞職や合意退職には応じてもらえません。

では、「辞めてもらう」には、会社はどのようなステップを踏んでいけばよいのでしょうか。従業員の性格や置かれた状況によって事案は様々ですが、ここでは一般的な流れをご紹介していきます。

退職勧奨から円満な退職へ

従業員に自発的に辞めてもらうまでの一般的な流れは、次のような手順が考えられます。

  1. 会社による退職勧奨
  2. インセンティブの付与
  3. 退職届の受領、または退職合意書の作成

それぞれについて、詳しくご説明していきます。

会社からの働きかけ(退職勧奨)

会社から退職ことを促す、いわゆる退職勧奨をすること自体は、原則として自由に認められています。

ただし、退職勧奨をする話し合いの中で、怒鳴ったり、威圧的だったり、あるいは虚偽の情報を伝えたり、人格否定をしたり、など、度を超えた(社会的に不相当な)方法で退職勧奨はいけません。いったん退職の合意がされても後で無効と判断されたり、ひどい場合は損賠賠償請求を受ける可能性もあります。

また、退職勧奨を受けて、従業員が退職するかしないかはその人の自由です。そのことは最初に伝えた方がいいかもしれません。その上で、一通り話をした上で、もし明確に「退職したくない」と言われてしまったら、その場で退職勧奨は中止してください。もし再度、退職勧奨を行うのであれば、条件を上げる等、工夫が必要です。

退職勧奨は、冷静に辞めてほしい具体的な理由(人事評価が著しく低いなど)を伝え、自発的な退職の意思を引き出すもの。会社側は2~3人が立ち会って、冷静に、粛々と。仮に録音されていても恥ずかしくないレベルの対応が求められます。

インセンティブの付与(条件提示)

では、従業員が自発的に辞めたい、と思うには、どうすればいいのでしょうか。

一言で言ってしまうと、退職した方が得だ、と思わせるような条件を提示することです。具体的には

  1. 会社都合退職の扱いとし、いわゆる失業手当がすぐもらえるようにする。
  2. 退職日を1ヶ月~数ヶ月先の日付とし、その間は出勤義務を免除して、再就職活動のため便宜を図る
  3. 退職金を上積みする
  4. 残っている有給休暇を買い取る

などが考えられます。

2は、たとえば6月末に退職の合意がなされたとして、退職日を8月末とし、7~8月は出社しなくていいよ、就職活動をしてね、というイメージです。出勤免除の期間に就職活動をすれば、在職中として面接を受けることになります。履歴書に「退職」と書くより、「在職中」と書いた方が、再就職に有利と思われる、という趣旨の配慮になります。

合意できたら、書面に残す

退職勧奨の結果、従業員が自発的に退職する意思を示したら、きちんと書面に残しておくことが重要です。

退職届を提出してもらうか、退職合意書を作成しお互いに署名捺印するか、の方法になるのですが、

どちらかというと「退職合意書」の方がお勧めです。上で書いたような条件を明文化することで、従業員も安心するでしょう。

もし退職届を書かせて提出させるのであれば、やや煩雑な話になりますが、「退職届を受領した旨の通知書」を会社から従業員に手渡し、受領のサインを従業員からもらっておくなどの工夫が必要です。

退職勧奨のまとめ

代表社労士の猪狩です。
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退職勧奨から合意退職までの流れについて説明してきました。

基本的に退職勧奨をする側はかなりデリケートな対応が求められます。相手によって、誰が退職勧奨を担当するのか人選も重要になります。どのような説明をすれば説得がかなうのか、丁寧な事前準備も必要です。

テクニカルな面もご紹介しましたが、大事なことは、その従業員に対して正面から誠実に話をすること、不安に思っていることが何なのか耳を傾け、会社としてできる策を示すこと、だと思います。

社長さんの中には、辞めさせたい社員に多額の解決金を支払うのはいやだ、という方もいらっしゃいます。お気持ちはよく分かるのですが、その後ずっと雇用した場合や、強引に解雇して争われた場合と比較すれば、多少の出費は覚悟で合意退職による解決した方が、経済的にも、経営面のリスク管理面から見ても、メリットはあるのではないかと考えます。

当事務所では、退職勧奨の準備や提示する条件の検討、合意退職にあたっての書面作成などをサポートしています。顧問契約をしていただければ、タイムリーにご相談いただくことが可能です。